2008年3月7日金曜日

ついでにちょっとライブドア

 楽天・ソフトバンクと来たので、今回はそれら二社と共にIT御三家と称された、かつてのライブドアホールディングス(以下「同社」)について。
 とはいっても上場廃止によって直近の業績は非開示になってしまったので、かつての成長期における多角化戦略についてのみ、チョイと見てみます。


 水平展開型の楽天や垂直統合型のソフトバンクと比較した場合、同社の多角化戦略の特徴は、個々の参入事業の関係が薄いことです。
 これこそ「コングロマリット」と呼ぶべきでしょう。
 M&Aによって急成長したということで一括りにされることもあった同社と楽天・ソフトバンクですが、ちょっと分析してみると三「社」三様のあり方が見えてきて、面白いですね。

 同社の多角化戦略で違和感を感じるのは、同じカテゴリーの企業間でもシナジーを効かせようとする意図がまるで見えなかったことです。
 プロジーグループを抱えてLindowsというプロダクトを持っていながらターボリナックスを買収したり、セシールを傘下に収めても本体のポータルサイトを介したECサービスとの連携をしなかったり。
 こうした方向性の見えない多角化はどのような意図に基づいて行われたのか、あるいは、そもそも方向性を持った多角化戦略があったのか否か…
 できることならば、堀江元社長に伺ってみたいものです。

 さて、同社が「暴走」とも言われる、こうした強引な事業拡張に走ったのには、様々な理由があると思います。
 その中でも大きな要因の一つに、グループの核(コア)となるべきであった起業事業がスペシャリティを喪失してしまったことがあるのではないでしょうか。

 同社の起業事業は、Webサイトの構築受託です。
 当該事業、特にECを中心とした分野に関するそれは、インターネット普及期(1990年代後半)において「SIPS(Strategic Internet Professional Servece)」と呼ばれ、急成長を期待されていた分野でした。
 代表的な企業としては同時期の同社の他に、IMJや旧ネットイヤーグループ等があります。
 ところが2000年代に入って、ITバブル崩壊の一方でインターネット利用が一般化しました。
 その過程で、それまでインターネットに対応しきれなかった既存のシステム開発受託企業(SI事業者)が、インターネットへの対応を進めました。
 その結果、事業としてのスペシャリティを喪失すると共に、2002年末には、株式市場における評価(PERベース)も、既存のSI事業者に対するそれと同程度にまで落ちてしまいました。

 ネタバレしちゃうと私は当時、機関投資家サンに対してそういう話(「SIPS企業は今後、既存のSI事業者と同様に評価すべきだ」つーハナシ)をしたんですね。
 その頃の私は未上場企業のリサーチャーであって、機関投資家向け情報発信をする証券アナリストではなかったのにw

 いずれにしても、2001~2002年にかけて、起業事業は求心力を失ってしまいました。
次の核として2002年11月に旧ライブドアを吸収してポータル事業に進出したワケですが、当該事業は競合が多い上に絶対的な強者(Yahoo)が存在します。
 そのため、なにがしかの差別化策が必要な状況でした。
 その差別化策としては、ポータル上でどのようなサービスを提供するか、という形で楽天同様の水平型の多角化を志向するのが順当な戦略だと思うのですが…
 同社の場合、それが行き過ぎてしまったのではないか(多角化のための資金調達法も含めて)と推測できます。
 本当のトコロは堀江元社長しか知り得ないワケですが、おそらくは永遠に謎のままなんでしょうね。

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