様々な見方があるでしょうが、私は「現在とは異なる事業ドメインを企業ないしは企業グループの中に取り込むこと」と考えています。
ここで言う「事業ドメイン」は、「企業が行う事業をモデルとして捉えたもの」程度のイメージです。そのモデル化手法も、自分や受け手に分かり易ければ、どんなものでもいいと思います。5W2Hで考えてもいいし、4P/3C(マーケティング論において事業ドメインを見る考え方)で捉えてもいい。
私自身は、こうしたモデル化においては、より少ない要素に単純化した方が、理解が容易だと思っています。
そのため、投資家やVC向けに事業説明をするためのアドバイスを未上場企業サンに対してするトキ(応募してみた大手コンサル屋サンにはキャリアとして認めて頂けませんでしたが…orz)や、若いモンにIB業務の基礎としての経営戦略論を教える際には、
- What(何を)
- Whom(誰に)
- How(どう売るのか)
の三点を明確にするように言ってきました。
これは、事業ドメインの把握を容易にすると共に、その差別化要素を明確化することを目的としたものです。
企業の経営戦略の見方の一つに、価格競争力向上(コスト・リーダーシップ)と差別化に二分して捉える考え方があります。
前者は生産・販売数量の極大化などの手段によって単位コストを削減し、同業より優位な価格戦略をとる手法です。
一方後者は、製品やサービスに競合他社と異なる性質を持たせることで、単一ユニット当たりの付加価値を向上させる手法です。
私が使ってきた事業ドメインモデル(What/Whom/How)は、後者の差別化策の捉え方として用いることができます。その中では、先に挙げた方が差別化要素として強く、資本市場においても投資家に対してアピールし易いものと考えられます。
上で述べた未上場企業サン向けの説明では、ITバブル期に高く評価された数社を例に取りました。
第一の要素-Whatによる差別化を達成した企業として、ヤフーと楽天を挙げました。
ヤフーも楽天も、サービス開始当初に同業他社が無かったワケではありません。
但し、ヤフーは、数多あった検索エンジンの中で、ポータルサイトとしてのサービスを拡充させた最初の例と言えるでしょう。
また楽天は、多くの企業を対象に手広くサービスを提供して、ECモールというサービスを産業としての位置付けまで引き上げた存在と言えると思います。
このカテゴリーに含まれる最近の例としては、SNSサービスのMixiや携帯電話用ゲームSNSのDeNAが挙げられるでしょう。
第二の要素-Whomによる差別化は、要は「儲けさせてくれるお客を見つける」というコトです。顧客の事業成長に伴って、自社の事業も成長するパターンです。例としてはメガチップスと鷹山が挙げられるでしょう。いずれも、カスタムLSIのファブレスメーカーでした。
前者は任天堂に対してゲーム用LSIを売り、後者はNTTドコモに対して携帯電話ネットワーク用LSIを売ることで、業績を伸ばしました。任天堂はゲーム市場のトップベンダーでしたし、携帯電話の普及期においてNTTドコモは圧倒的なナンバーワンでした。
特に後者の、NTTドコモとの関係が切れた後の迷走が、優良顧客確保の重要性を改めて認識させてくれます。
第三の要素-Howによる差別化は、IT分野において有効ではありません。
いわゆる「ネットワーク外部性」が働くことで、同種のサービスを行う企業の中で勝ち残れるのは少数に限られます。差別化が弱ければ、先行企業に追いつくことは不可能です。
ヤフーや楽天が急成長している頃、ポータルサイトやECモールで、ターゲット顧客層を絞ったり商品調達の方法にヒネりを加えたりして起業する例が多く見られました。
そうした企業の社長サン達の中には「ヤフーや楽天なんか、すぐに抜かして見せますョ。ハッハッハ~」とおっしゃっていた方もおられましたが…
結果は御覧の通りです。
ですから、私は未上場企業サンに対して「他社と十分差別化できるだけのWhatか、中長期的な成長を支えてくれるようなWhom、できれば前者を見つけましょう」というハナシをしてきました。
後に「ブルーオーシャン戦略」つー考え方が世に出たトキには、「誰でも考えるコトは大差無いネェ」と思ったものです。
(以下、次回)
0 件のコメント:
コメントを投稿