2008年3月16日日曜日

セミマクロなハナシ(3)~風呂敷の広げついでに、政策提言なンゾを

 前回述べたように、差別化欲求が強く、かつ厚みのある消費者層に支えられ、日本においては競争力の相対的に低い企業も生き残ることができました。
 しかし1990年代末以降、自動車などの競争が国際化した産業においては、淘汰が進んでいます。日産・マツダ・三菱など外資の傘下に収まる企業や、いすずの乗用車のように事業撤退に追い込まれるメーカーが出ました。
 ただ、そうした変化は、EU統合を機に始まった、企業間競争の国際化という要因だけによるものではないと思います。日本国内の消費市場の厚みが無くなったことで、競争力の弱い企業を下支えできなくなったことも、その理由であろうと考えています。
 この変化は、所得再配分の見直しによる、国内経済の縮小によってもたらされたのではないでしょうか。

 所得再配分を富裕層側に振ると経済が縮小するのは、日米両国における実験の結果として認識できるでしょう。
 日本では1990年代以降、アメリカでは2000年末に現ブッシュ政権になってから、所得税累進率を緩和して、いわゆる「金持ち優遇策」を取りました。
 しかし、お金持ち一人が遣う金額は、貧乏人百人のそれより小さい場合が多いワケです。従って、こうした政策は、民間消費支出の減少による景気の減退を招きます。
 景気が減退すれば、当然、税収も減少します。これが公共工事をはじめとする景気対策による支出増とあいまって、財政赤字の拡大を招きました。
 アメリカは、減税と同時に、低所得者向け住宅ローンと住宅担保貸付を一般化することで、貧乏人にも無理やりお金を遣わせて対応しましたが、それがサブプライム問題を招く結果となりました。
 日本ではバブル崩壊後、土地や住宅の担保価値が低くなったままですし、質素・倹約を是とする国民性から、民間消費支出は伸びません。むしろ社会保険負担増やサラリーマン減税の消失など、消費支出を更に減少させる方向に動いています。また、最近の資源価格高騰による物価上昇は、その傾向を更に強めることになるでしょう。

 一方、企業収益は、民間消費支出拡大策をとったアメリカや、中国などの新興国向けの輸出拡大で改善してきました。しかし、最大の消費市場であるアメリカの景気が後退すると、この状況も変わります。
 これに対応するには、内需、特に民間消費支出を拡大するのが一番だと思います。

 そのためには、どうすればいいか?
 一番効果が高いのは、現状を招く大本となった原因の逆をやってやることではないでしょうか。即ち、所得税累進率を上げ、その分、貧乏人の可処分所得を増やすことです。
 可処分所得が増えれば、生活水準を上げて(つーか元に戻して)、支出を増やすでしょう。あるいは、もう一人子供を設けようという気になる夫婦もあるでしょう。少子化対策としても有効だろうと思います。そうして民間消費支出が増えて経済が活性化すれば、税収も当然上がるでしょう。
 企業にとっても、外需だけでなく内需もあるとなれば、事業リスクの低減と共に成長機会の増加がもたらされることになります。
 アメリカにおいて1990年代後半、レーガノミクスの後に行われたクリントノミクスと同様の政策が、現状の日本において効果大であろうと私は思います。

 そうなると、富裕層の勤労意欲や消費支出を削ぐおそれがあるという意見が出てくるでしょう。それには、やはりアメリカの制度が参考になると思います。寄付控除を大幅に認めればよいのです。
 例えば、福祉・介護団体や地方自治体への寄付を控除すれば、現在問題となっている、それらの組織の活動を支援することにもなるでしょう。
 あるいは、ベンチャー企業向けエンジェル投資の課税減免を現状よりも大幅に認めるようにすれば、低迷している起業件数が増え、産業全体に刺激を与えることが出来るでしょう。
 所得の再配分を自己裁量で行う権限を個人に与えることで、逆に富裕層の意識を高めることも可能であろうと思います。
 また、株式投資による収益に対する減税措置を恒久化すれば、停滞する株価対策としての意味も出てくるでしょう。

 え? お前が無職の貧乏人だから、貧乏人優遇策をとって欲しいんだろうって?
 えぇ、まったくその通りですm( )m

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