2008年9月24日水曜日

ブラックサンデーを好機に

 去る9/14(日)に米連邦破産法第11条(Chapter11)の適用を申請するカタチで、米証券大手のリーマン・ブラザーズが経営破綻に到ったコトを機に、世界各地の株式市場は大幅に下落しました。これを一部で「ブラックサンデー」と呼んでいます。サブプライム問題やCDS(倒産補償証券)問題による金融不安に加え、米金融当局の施策に対する不安~ソレより以前の3月に資金供与で救済されたベア・スターンズが救済されてリーマンが救済されないコトの不整合に対するモノだと思いますが~が、ソの大きな一因と言えるでしょう。ヒトによっては、「証券最大手のゴールドマン・サックスですら、安全とは言えない」と仰ってましたネ。
 続いて経営危機が表面化した保険大手のAIGに対する公的資金注入による救済や、更に発表された不良資産買取機関の創設・MMF資金保護・金融株の空売り禁止や各国中央銀行を通じたドル資金供与といった安定化策によって、市場のショックはとりあえず一段落つき、安心感が広まっているようです。とはいえ、不安感が拭いきれたワケではありません。今回生き延びたAIGだって、FRBからの融資を返済せねばならないワケで、危機を完全に脱してはいないのです。

 ワタクシ個人的にも、今回の件では大きくマイナスの影響を受けます。株式資産が目減りしたのは、長期保有で考えているのでまだイイのですが、再就職活動がより一層、厳しいモノになりそうです。
 少し前にメディア系アナリスト会社の採用で若モノとの競合に負けてしまってがっくりキているのですが、そうした面白そうな案件は更に細りそうです。
 金融機関本体の採用は、なおさら狭き門になるでしょう。ココにリーマンからあぶれたヒト達が入ってくるワケで… orz

 ともあれそうした環境下、日本企業にとってこの9月中間決算やソレを含む通期決算(2009年3月期)は、そうとう厳しいモノになりそうです。
 金融不安から実体経済への影響は避けられず、先進国を中心に景気が減退する中、本業の業績が悪化しつつあります。
 更に今回は、これまで以上に株安が企業に影響を及ぼします。2000年前後には、金融機関を中心とした株式持合いの解消に伴って、企業による株式保有は減少しました。しかしその後の景気回復期には、企業による株式保有が増加しています。2007年度には金額ベースでは減少していますが、その間一貫して、企業は株式を買い越しています。その後もソの傾向は続いています。2008年度入りした4月こそ若干の売り越しでしたが、5月以降は再度、買い越しの状況が続いています。M&Aの増加に伴って「買収防衛策」が話題になるようになったのが、2004年以降のハナシです。企業による株式保有の増加とソレが時期的にリンクしているコトから、買収防衛策の一環としての株式持合いが増えているであろうコトが推測されます。こうして積み上がった保有株式の評価損が、企業業績の足を引っ張るコトになります。

 ブラックサンデーに先立つ6月頃から、日経平均は下げ基調でした。金融不安の中で企業の業績悪化を織り込む動きだったのでしょう。ただ、9/19(金)に9月中間決算予想の大幅下方修正を発表した東芝の株価が、9/22(月)において日経平均を超えるペースで上昇したことから、既にかなりの部分が織り込み済みである可能性は見えてきたと言えるでしょう。

 とはいえ、本格的な市場回復は、売買の主役である外人や個人が買い越しに転じてからというコトになるでしょう。
 そのうち個人は昨年(2007年)以降、売り越しを続け、その分を現預金として積み上げています。また、ネット証券の新規口座の増加が、そのペースを落としつつあるとはいえ、続いています。一部では「証券会社への個人投資家の問合せが増えている」との報道もありました(先週あたりのWBSか報道ステーションだったような…)。個人が買い出動するモチベーションは、高まりつつあるのではないでしょうか。悪材料出尽くしなどで株価に底入れの兆しが見えてくれば、市場に個人の資金が戻る可能性は、充分にあるでしょう。とはいえ、実際に動き出すのは、もうチョっと先になるかな?

 足元の業績悪化が危惧される一方で、世界的な株安が日本企業にチャンスとなる可能性もあります。
 1980年代末のバブル崩壊以後、銀行による貸し渋りに対応するため、日本企業は銀行に頼らない経営を志向してきました。借入金を返済しつつ、内部留保を積み上げてきました。特に2000年のITバブル崩壊以後、その傾向は強くなっています。内部留保が積み上がった企業はM&Aのターゲットになりがちなのですが、これに対しては、上記の株式持合いや各種の買収防衛策を採用して対応しました。この間、人件費削減等による収益力向上の一方で役員報酬を大幅増額する企業もあって、ガバナンス的にどぉよ?と思うトコロもありますが、結果として、企業の経営基盤はかなり安定化したと言えるでしょう。
 この積み上がった内部留保の有効利用が、次のステージにおける日本企業の課題となるでしょう。割安となった海外企業を対象としたM&Aは、有効な成長策となりえるでしょう。既に金融機関は、そうした動きに出ています。
 日本企業には、今回の危機をむしろ好機として捉え、成長に向けた戦略を考えて欲しいと思います。

0 件のコメント: