2008年1月2日水曜日

動画コンテンツ配信事業について

 年末~年始のスキーの予定がキャンセルになってしまったので、この正月は専らネットサーフィンですorz
 その中で、動画コンテンツがネット上で多く流れるようになったことを、強く感じます。
 2007年を通じて、YouTubeやニコニコ動画といった動画配信サイトが注目を浴びました。
 しかし、そこで流れているコンテンツは、短時間のものばかりです。
 一定以上の時間をかけて楽しむような動画コンテンツ(ここでは「番組」と呼びます)を見るには、GyaoやYahoo動画といったサイトを利用する必要があります。
 これらの中では、Gyaoの充実度合いが目立ちます。
 ドラマや映画といった既存番組の量が増えただけでなく、独自番組も徐々に増えて来ています。
 今回は、こうした番組の配信事業について、少し考えてみました。(主に事業主体に関する考察で、技術面については考慮しません)

 番組配信は、地上波テレビから始まりました。
 特に在京・在阪のキー局は、番組配信ビジネスの主役として、今でも圧倒的な存在感を示しています。

 そこに、技術の進歩によって、新たな番組流通チャネルが出来ます。
 その新たな流通チャネルでビジネスを行う事業者が直面するのが、番組調達能力の問題です。
 これは、既存番組の再配信権取得に関するものと、独自番組の制作に関するものに分けられます。
 新規参入チャネルが事業を拡大していくと、いずれ後者の課題に直面します。
 一般に、番組を流通させるチャネルと、番組を制作する制作会社は、別の企業です。
 単純に考えれば、新規参入チャネルが制作会社と契約を結べば、独自番組の調達が可能になるはずです。
 しかし制作会社は、大口顧客である既存チャネルとの関係を壊しかねない、新規参入者との関係構築に対して積極的にはなれません。

 さて、そもそも番組というものは、大勢のニンゲンの手によって作られます。
 スタジオ見学をすれば分かりますが、出演者以外にカメラ・照明・進行など、番組収録には多くの人が関わっています。
 見えないところでもコンソールルームで作業するスタッフがいますし、そこに至るまでにも原案・脚本・構成など、数多くの人の手を経ています。
 さらにその後も、編集やチェックなどに手がかかるわけです。

 そうした一つ一つの作業の多くは、独立した中小企業が担当者を派遣したり、自社でやったりします。
 それでは、いわゆる「制作会社」がナニをやってるかというと、彼ら番組制作スタッフの調達及び調整と監督ですね。
 これは、建築・建設という、やはり多くのニンゲンが携わって一つのモノを完成させる事業に近いワケです。
 案件を受注したゼネコンが、設計士事務所に設計を委託し、足組み・左官・電気など、個別の機能を持つ多くの中小企業(工務店)から作業員達を手配して作業の指示・監督をする。
 建築業におけるゼネコンの役割が、番組制作における制作会社の役割です。
 数多くの実働企業(あるいは個人)とのコネクションが、彼等のコア・コンピタンスと言えましょう。
 そのノウハウは、一朝一夕に構築できるものではありません。

 つまり、番組を制作するには、制作会社とのコネクションが必須だと考えられます。
 それでは、制作会社を一つ抱えれば新たな番組を調達する能力が手に入るかというと、チト難しい。
 番組の分野は、ドラマ・報道・バラエティ・ドキュメンタリー・教育・スポーツ・アニメなどなど、と幅広く、それぞれを得意とする制作会社があるワケです。(もちろん大手の総合制作会社もありますが、出来た番組を見ると、やはり得意分野・不得意分野があるように感じます)
 総合チャネルの場合、個々の番組を担当するチャネル側のプロデューサーが、その分野を得意とする制作会社を使うようですね。
 チャネルがカバーする全ての分野において、それぞれを担当する制作会社と良好な関係を構築できないと、独自番組の調達能力が手に入ったとは言えないでしょう。

 衛星チャネルは、地上波チャネルの資本を受け入れつつ、時間をかけて、この障壁を乗り越えました。
 この際、特定分野の専門チャネルを多数並べるという仕組み(いわゆる「多局化」)を導入することで、番組調達リスクを分散したと考えられます。

 ケーブルテレビは、衛星チャネルと同様に、多局化の仕組みで動いています。(というか、衛星チャネルと同じチャネルが流れてます)
 また、インフラを運営する事業者が、ISPと電話サービスの同時提供(いわゆる「トリプルプレー」)による利便性を訴求してきました。
 さらに、地域独占という特権を得たことで、競争を回避することもできました。

 ここ数年の間、番組調達能力の問題に直面しているのが、インターネット業界です。
 USENのGyaoは、初期においては「大したコンテンツが無い」と非難されもしましたが、1,700万人になろうとする(2007年11月末時点)圧倒的な登録ユーザ数を背景に、コンテンツ調達能力を高めつつあります。
 当該事業は収益化の面では、未だ先行きが明るいとは言い切れません。
 とはいえコンテンツの充実度合いを見ると、「死の河」を渡りきるのも近いかな、と感じられます。
 次のステップとして独自番組の拡充にどこまで注力するか、注目したいところです。
 ソフトバンクはコンテンツ拡充に苦労しているようですが、収益化を優先して、緩やかな事業拡大を選択したようにも見えます。
 携帯電話事業における競争が厳しいので、ビジネスリソースがソッチに割かれていて、それどころではないのかもしれません。
 楽天は、既存チャネルの有力事業者を手に入れることで一気に問題を解決しようとしましたが、これは失敗でした。次の手が待たれるところでしょう。

 2007年には、電機メーカーが共同で新たなコンテンツ配信サービスを立ち上げました。「アクトビラ」です。
 同9月1日からのVOD機能拡大で、性能面では地上波デジタルを超えた(かもしれないw)ワケですが、そこで流すコンテンツがお粗末なものであれば、視聴者はついていきません。
 また利便性が低くても、同様の結果に陥るでしょう。
 家電を利用したチャネルとしては、キャプテンシステムをはじめとして、いくつものサービスが、離陸できず終息を向かえました。
 今回のサービスは、既存チャネルに近づくことができるでしょうか。
 テレビとの一体性という潜在的に高い利便性から、筆者としては期待したいところなのですが…。
 残念ながら現時点で、世間の評価は低いようです。
 しかし、epのように短期で投げ出さず、扉を開け続けて欲しいと思います。
 また、より広く開けるように努力して欲しいと思います。

0 件のコメント: