2008年6月2日月曜日

株価についての、よしなしごと

 前回初めて、このblogで株価について触れました(チョットですけどw)。今回はそれに関して、うつらうつらと考えたコトを、徒然なるままに書いてみます。

 そもそも株価とは何でしょうか。理念的なものから卑近なものまで、色々な捉え方が為されています。その中の一つに、会社(の一部)に付いた値段、というものがあります。それに発行済み株式総数を掛ければ、会社全体の値段=時価総額となります。まぁ、実際その値段で買収されるコトは少ないんですけどね。時価総額は、いわゆる「企業価値」と呼ばれるモノの代表的なものです。


 一言に「企業価値」と言っても、それは対象企業との関わり方によって様々です。顧客から見た価値、従業員から見た価値、取引銀行から見た価値、納入業者から見た価値……それらはそれぞれ異なり、かつ流動的です。
 それらの中で時価総額は、情報としてオープンであるコトと評価者の数が多いコトが大きな特徴です。そうした要因から、時価総額は「企業価値の最大公約数(≒共通認識)」的なモノと言えると思います。
 そうであるからこそ、時価総額あるいは株価を、他の要素で説明する指標が、古くから数多く生み出されてきたのではないでしょうか。PER・PBRから、QレシオやPSR、EV/EBITDA等々…

 また、株価を予想する「モデル」も多く作られています。直近までの株価上昇期には、DCFやEVAを用いた、いわゆる「理論株価」が注目を浴びました。
 これらのアプローチは、事業が生み出すキャッシュフローや付加価値の積み重ねを現在の価値に割り引いたものを「事業価値」と捉えます。そして、事業価値と金融資産価値の合計を企業価値とし、それが時価総額とイコールになるという考え方です。まぁ試しにはじいてみると、理論株価が実際の株価より高く出る場合が、結構多かったりします。

 これには様々な理由が考えられますが、想定投資期間の差も、その一つと言えるでしょう。
 DCFやEVAという事業価値モデルでは、企業をGoing Concernとして捉え、無限期間を想定しています。一方、市場で行われる個々の株式投資は、無限ではありません。ある程度の期間にある程度の投資収益を求める、有限期間の行為です。同じモノを扱う上で、無限期間を想定するモデルと有限期間のモデルでは、前者の方が高くなる傾向が出てきてもおかしくない、つーか、その方が自然でしょう。
 但し、その「ある程度」の期間を、投資する時点ではっきりと認識している投資家は極めて少ないでしょうし、仮にそうであっても、後に変更するコトが多いと思われます。モデル化は極めて困難です。株式に対する投資期間に関する調査結果をドコかで見た覚えはありますが、全体に関する調査だったと思います。ソレを個別銘柄に適用するのは、さすがにムリがあります。

 また、投資家が求める期待収益も、把握するコトは極めて困難です。
 おそらく、多くの投資家、特に個人投資家の方々は、明確な収益期待を持って投資を行っているワケではないでしょう。なんとな~く、儲かりそうな銘柄に手を出しているコトと思われます。それでも、その「なんとな~く」には、「銀行預金やMMFよりは多くあって欲しい」とかの、あいまいな形での期待収益概念が含まれているだろうと思うんデスょ。さもなければ、わざわざリスクの高い資産に手を出さないでしょう。

 もし投資期間と期待収益(利回り)を考えるコトができれば、株価は利付債の理論価格と同じように形成されると想定するコトができます。投資期間経過後の理論株価は、その間の期待配当も含めて期待利回りで割引いた現在価値が、現在の株価となるようにすれば求められます。
 問題は上記のように、想定投資期間も期待利回りも分からないコトです。
 無理矢理求めるとしたら、代替要素としては、過去の実績を用いるしか無いでしょうね。投資期間については、取引所とか証券会社(あるいは系列のシステム会社)の扱っている売買トランザクションデータから、個別銘柄について平均保有期間のサンプルが取れるでしょう。配当は直近の実績を使うしかないかな?と思います。対象企業が予想を出していれば、それを使ってもいい。利回りも直近実績を使えばいいでしょうが、安全資産利子率を引いた超過収益率や、DCF法と同様の資本コスト(WACC)を使ってみる手もアリでしょう。色々試算してみて、落ち着きのいいトコロを使えばいいと思います。
 ~てな風にヤってやれば、形式的には算出することができるハズですが……労多くして益少なし、つーか、かかる手間とコストの割りに信頼性の低いモデルになりそうだなぁw

 さて、「ファンダメンタルズ」と呼ばれる企業の経営指標群や様々な経済指標から株価評価を行う職種が、「証券アナリスト」と呼ばれるものです。彼らのレポートでは例えば、「PER×0.5+PCFR×0.3+EV/EBITDA×0.2で見て、目標株価○○○円」なんて書かれたりすることがあります(ココで例示した指標と掛目はテキトーです)。
 なんつーか、理論付けに苦労してるな~、と思います。
 私も15年以上前に就職して以来、延々と「証券アナリストをやらせて欲しい」と会社に訴え続けてたんですが、結局ヤらせてもらえませんでしたorz (まぁ、ソレが退職の一因ではあるのですが)
 でも、最近の当該職種は、私の就職当時とは性格が変わってきているようですね。私が求めていた仕事とは、微妙に違っているような気もします。

 色々述べてきましたが、実際に個人として銘柄を見る上で私が使うのは、結局のところPERだったりしますw なんだかんだ言って、一番長期的に妥当性が高いように感じるんですョ。
 ただ、それがあてはまらなくなるのが、株価の上昇局面です。資金が流入して、PERで説明可能な範囲を超えて株価が上昇する段階になると、他の説明要因が求められます。1980年代後半のバブル期には企業の含み資産が注目され、Qレシオが使われました。2000年前後のITバブル期には、先行投資によって利益をあげられないIT企業を評価するため、PSRが使われました。直近の株価上昇期にはキャッシュフローが重要な評価基準となり、DCF法が理論株価算出に利用されました。
 次の株価上昇期には、どんな指標が使われるでしょうか。それを見つける(あるいは提唱する)金融機関や調査機関が、先行者利益を得ることになるでしょう。

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